概要
自民党元幹事長の石破茂氏(67歳)は、自身5度目の挑戦で党の総裁選挙に勝利した。9月27日に行われた決選投票で、石破氏は215票を獲得し、新たな自民党総裁に選出された。第1回投票では、高市早苗氏が181票でトップ、石破氏が154票、小泉進次郎氏が136票獲得し、過半数を獲得した候補がいなかったため、高市氏と石破氏が決選投票に進み、最終的に石破氏が勝利した。
自民党の支持を受け、石破氏は10月1日に行われる国会の投票で正式に首相に選出される予定で、同日に新内閣を発足させる見込み。複数の報道によると、石破氏は10月9日に衆議院を解散し、10月27日に総選挙が行われる予定。
石破氏は、岸田首相の経済政策全般を引き継ぐと予想されている。特に地方創生、防災、社会基盤の強化に強い関心を示しており、将来的に投資機会が拡大する可能性あり。また、現行の外交・安全保障政策を踏襲する見通しだが、総選挙後に優先事項や政策方針が変わる可能性も否定できず、これらの動向を注視する必要がある。
選挙結果と分析
一回投票
自民党の国会議員368名と党員368名が投票した第1回投票では、右派の著名な人物である高市早苗が、日本初の女性首相を目指し181票を獲得した。一方、強い世論の支持を受けていた43歳の小泉進次郎は、戦後最年少の首相になる可能性があったが、136票にとどまり敗退した。過半数を獲得した候補がいなかったため、高市と石破の間で決選投票が行われた。
高市は特に保守的な経済・外交政策において、安倍晋三元首相の思想・政策を受け継いでいる。一方、石破は理想主義的な改革派であり、安倍の政策や統治手法に対する長年の批判者である。
決選投票
第2回投票では、自民党の国会議員368名と全国47都道府県の代表が投票し、石破茂が215票を獲得して、高市早苗の194票を上回り勝利した。この結果は、自民党の選挙制度の予測の難しさを浮き彫りにしている。約10年前、石破は第1回投票で安倍晋三より多くの票を得ながら、決選投票で敗北したが、今回はこの選挙制度が石破に有利に働いた。
勝因
石破茂は、過去に自民党内で人気が低かったにもかかわらず、第1回投票で他の穏健派候補を支持していた国会議員から票を集めた可能性が高い。特に、3位で決選投票に進めなかった小泉進次郎を支持した議員の多くは、高市の右派的な立場に共感せず、石破を支持したと考えられる。また、石破は安倍・岸田両政権から距離を置いているため、スキャンダルで傷ついた自民党のイメージを回復する上で有利と見られている。石破の選出は党の再活性化を意図していると考えられるが、それは同時に、上昇する生活費に対する国民の不満や、不安定さを増す地域の安全保障環境に対処する必要があることを意味している。
総選挙の見通し
石破氏は、9月30日(月)までに党執行部の人事を最終決定する見通しである。10月1日(火)には岸田文雄首相と内閣が総辞職し、石破氏が正式に首相に選出された後、同日中に新内閣を発足させる予定だ。
総裁選が終わり、現在の焦点は衆議院解散の時期に移っている。石破氏は10月9日に衆議院を解散し、10月15日に公示、10月27日に総選挙を実施する方針を固めた。読売新聞は、次期自民党幹事長に就任予定の森山裕氏が、総裁選の熱気を利用して早期に総選挙を行うよう石破氏を説得し、その結果、石破氏は早期解散に方針を変更したと報じている。
石破茂の略歴
10月1日に新内閣が発足し、石破氏は10月9日に衆議院を解散、10月27日に総選挙を実施する予定。
石破茂の略歴
1957年に鳥取県で生まれた石破茂は、日本の政治において長年にわたり重要な役割を果たしてきた人物である。1979年に慶應義塾大学で法学部を卒業し、三井銀行に就職。1981年に元鳥取県知事・参議院議員であった父の石破二郎が亡くなった後、父の親友であった田中角栄元首相から、父の後を継いで政治家になることを勧められ、25歳で政界入りを決意する。
1986年、29歳で衆議院議員に初当選し、当時最年少の議員となった。当初は農業政策を中心に取り組んでいたが、1990年の湾岸戦争や1992年の北朝鮮訪問を契機に防衛問題へ関心が移ることとなった。2002年には小泉純一郎首相の下で防衛庁長官に任命され、初めて内閣入りを果たす。
石破は自民党総裁の座を目指し、2008年、2012年、2018年、2020年の4度にわたって総裁選に立候補したが、いずれもトップの座を勝ち取ることはできなかった。
「軍事オタク」とも称される石破は、防衛に強い姿勢を持つことで知られており、日本がより積極的な軍事姿勢を取るべきだと主張している。また、政治の外では、模型の飛行機や船を作ることを趣味としており、彼の防衛や戦略に対する深い関心がうかがえる。
企業に対する政策の影響
石破氏の過去の発言や、総裁就任後初の記者会見に基づくと、以下のポイントが特に注目すべき事項として挙げられる。
石破氏は岸田経済政策を継承
石破氏は先日の記者会見で、岸田前首相が掲げた「新しい資本主義」を引き継ぎ、加速させる意向を示した。具体的には、物価上昇を上回る賃金上昇を実現し、消費を刺激して好循環を生み出すことを目指している。また、金融政策についても、日銀の現行方針を支持し、大きな方向性は変わらない。
岸田氏と石破氏の違いは、石破氏が「労働者への分配」により強い関心を持っている点にある。石破氏は、2020年代に全国平均で最低賃金を1,500円に引き上げることを目標として掲げている。また、一部の企業に対する法人税増税や、金融所得への課税強化にも意欲を示しているが、企業からの強い反発が予想され、これらの政策を実現できるかどうかは不透明である。
地方投資の機会
石破氏は約10年前に地方創生担当大臣を務め、国防と並んで地方創生をライフワークとして取り組んできた。当選直後の記者会見でも、「地方を守る」「地方人口の減少を止める」必要性を強調した。これに伴い、地方への投資に対する政府の関心が高まり、企業による東京以外の地域での事業展開へのインセンティブが増える可能性がある。ただし、同時に「東京も発展させる必要がある」とも述べており、地方にのみ焦点を当てる極端な政策を採用する可能性は低いと見られる。
防災と社会インフラ関連の投資機会
石破氏は総裁選中に提唱していた「防災省の創設」について、記者会見で「現行の内閣府における防災の人員と予算は著しく不足している」と述べた。さらに「2025年度からの人員拡充と予算の増額はすぐに実行可能である」との考えを示した。今後、防災庁・防災省の設置が実現するかどうかは不透明だが、石破氏が防災や社会インフラ関連の予算を増額する可能性は高い。
外交・安全保障の注目ポイント
石破氏はこれまで安全保障問題に強い関心を示してきた。日米地位協定(SOFA)の見直しや、アジア版NATOの構想について言及しているが、これに対しては米国から懸念の声も上がっている。記者会見で米国との交渉開始時期について問われた際には、明確な回答を避けた。岸田氏と比較すると、石破氏は日本の防衛力強化に対して前向きであり、中国の領空侵犯に対する強硬な対応を主張している。一方で、石破氏は高市氏のような強硬派とは異なり、現実主義的な側面もあるため、日米同盟に基づく現行の外交・安全保障政策を踏襲することが予想され、ビジネス環境に大きな影響を与える可能性は低い。しかし、今後の総選挙で勝利し、石破氏が自身の政治基盤を強化すれば、政策を理想に基づいて変更する可能性があり、企業は石破氏の外交・安全保障政策の動向を注意深く見守る必要がある。
メディアの報道
- 自民党 総裁選:米大使「より緊密な日米関係を」、中国「理性的な対中政策を」…石破茂・新総裁に各国も関心)
石破氏の勝利は、国際的にも大きな注目を集めている。アメリカのラーム・エマニュエル駐日大使は、日米関係の強化に対する期待を表明したが、一部の米政府関係者は、石破氏が主張する日米地位協定の見直しに懸念を抱いている。中国は、日本の対中政策に対して冷静なアプローチを求めており、韓国は、特に岸田政権下で進展した二国間関係の改善を踏まえ、今後も協力が継続することへの期待を示している。(読売新聞) - 円相場 荒い値動き 自民総裁選 石破氏選出で一気に円高進む
27日の東京外国為替市場では、朝方は1ドル=145円前後で取引されていたが、午後に自民党総裁選挙で石破氏が決選投票に進むと、円売りが加速し、一時1ドル=146円台半ばまで円安が進んだ。しかし、石破氏が新総裁に選ばれると円買いが急速に進み、わずか1分で1ドル=143円台半ばまで円高が進行。その後も円高が続き、一時1ドル=142円台後半に達した。最終的に午後5時の円相場は1ドル=143円18~21銭で、26日から1円83銭円高となった。市場では石破氏の今後の財政・金融政策への注目が集まっている。(NHK) - 石破茂氏、日米安保条約改定を提起 米シンクタンクに寄稿―「核の持ち込み検討を」 アジア版NATO枠内で
石破氏は自民党総裁選で勝利後、米シンクタンクに寄稿し、日米安全保障条約の改定を提起した。石破氏は、日米同盟の「非対称性」を改め、米英のような対等な同盟関係を目指すとし、自衛隊のグアム駐留などによる抑止力強化を提案。また、アジア版NATOの創設を提案し、核兵器の持ち込み検討も主張した。これは、中国や北朝鮮の核の脅威に対抗するためであり、アジアにおける安全保障体制の強化が急務であると警鐘を鳴らしている。(日本経済新聞) - 次期首相石破氏、10月27日に解散総選挙を設定
石破氏は首相就任前に、10月27日に衆議院の解散総選挙を実施すると発表した。この異例の決定は、自身の指導力に対する国民の信任を得ることを狙ったもので、立憲民主党の野田佳彦氏が率いる野党が結束に苦戦している中、その混乱を利用しようとしている。石破氏は、米国大統領選挙前に信任を得て、2025年まで新たな選挙を必要としない政治的安定を確保することを目指している。メディアは、この動きを、日本の政治情勢に対する早期の正当性と支配を狙った戦略的な一手として報じている。(Japan Times)
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